「一緒に稼ごう」は危険信号!大学生を狙うマルチ商法・高額セミナーの見抜き方とクーリングオフ【大学職員が解説】
(新入生)
まどさん、サークルの先輩から「将来のために、すごくためになる勉強会があるから来ない?」って誘われたんです。成功している人の話が聞けるらしくて……。
ちょっと待って!その誘い方、窓口で毎年聞いている「マルチ商法」や「高額セミナー」の入口によく似ているんだ。行く前に、今日の話を聞いてほしいな。
こんにちは、中堅私大で職員をしている「まどさん」です。
大学の窓口には、毎年のようにマルチ商法や高額なセミナー・スクールの契約トラブルの相談が寄せられます。被害に遭うのは、決して「お金にだらしない人」ではありません。むしろ、将来のことを真剣に考えている、まじめな学生さんほど狙われやすいのが特徴です。
しかも、2022年4月から成人年齢が18歳に引き下げられ、18歳・19歳でも親の同意なく契約ができるようになりました。そのぶん、「未成年だから取り消せる」という守りがなくなっています。
この記事では、よくある勧誘の手口と、断り方、そして契約してしまったときにできることを紹介します。
マルチ商法・高額セミナーってどんなもの?
- マルチ商法(連鎖販売取引):商品やサービスを買って会員になり、ほかの人を勧誘すると報酬がもらえるしくみ。「人を紹介すれば元が取れる」と言われるのが特徴です。
- 高額セミナー・スクール:「起業」「投資」「副業」「自己啓発」などをテーマに、数十万円の受講料を請求されるもの。「学生ローンで払えるよ」と借金をすすめられることもあります。
マルチ商法そのものは法律で禁止されているわけではありませんが、勧誘の方法には厳しいルールがあります。ウソをついたり、目的を隠して呼び出したりする勧誘は違法です。
よくある勧誘の手口
窓口で聞く話には、驚くほど共通点があるんだ。ひとつでも当てはまったら要注意だよ。
- 「いい話がある」「会わせたい人がいる」と、目的をはっきり言わずに呼び出される
- カフェやファミレスで、知らない「先輩」や「成功者」が同席している
- 「今日決めないと枠が埋まる」「あなただけに特別に」と決断を急がされる
- 「親や友達には言わないほうがいい。理解してもらえないから」と相談させないようにする
- 「人を紹介すればすぐ元が取れる」「学生のうちから不労所得」と簡単に稼げることを強調する
- お金がないと言うと、学生ローンやクレジットカードの分割払いをすすめられる
SNSで知り合った人や、同じ大学の学生を名乗る人から誘われるケースも増えています。
よくある勧誘のパターン(例)
窓口でよく聞く話をもとに、典型的な流れを2つ紹介します。※実際の相談をそのまま紹介したものではなく、よくあるパターンを組み合わせた例です。
パターン1:先輩からの「勉強会」
サークルの先輩から「将来のためになる勉強会がある」と誘われ、カフェに行くと、先輩の知り合いだという「成功している社会人」が待っていた。夢や将来の話で盛り上がり、「このビジネスを始めれば、学生のうちから自由なお金と時間が手に入る」と説明される。最後に「初期費用として商品を買えば、友達を2人紹介するだけですぐ元が取れる」と言われ、その場で契約書にサインしてしまった。
パターン2:SNSで知り合った「同じ大学の人」
SNSで「同じ大学です!」と声をかけてきた人と仲良くなり、会ってみると、投資や副業の話をされた。「月に数万円は簡単に稼げる」「お金がなくても学生ローンで払えば大丈夫」と言われ、数十万円の教材やセミナーを契約。あとで調べても、言われたような稼ぎはまったく出なかった。
どちらも、最初は「楽しい話」「ためになる話」から始まるのがポイントなんだ。お金の話が出てくるのは、相手と打ち解けたあと。だから断りにくくなるんだよね。
SNS・マッチングアプリ経由の勧誘に注意
最近は、SNSやマッチングアプリ、オンラインのコミュニティから勧誘が始まるケースが増えています。
- 「同じ大学」「同じ学部」と言われても、本当かどうかはわかりません
- 恋愛や友情の感情を利用して、断りにくくさせる手口もあります
- 「オンラインで説明会をするから」と、ビデオ通話で長時間説得されることもあります
会う前や話を聞く前に、少しでも「おかしいな」と思ったら、そのまま連絡を絶っても大丈夫です。
もし友達を誘ってしまっていたら
「契約したあと、自分も友達を勧誘してしまった」と悩む学生さんも少なくありません。
- まずは、これ以上誘わないこと
- 誘ってしまった友達にも、クーリングオフや相談先のことを伝える
- ひとりで抱え込まず、消費生活センターや大学の窓口に相談する
勧誘してしまったことで、自分を責めすぎないでください。あなたも、巧みな手口に巻き込まれたひとりです。早く動くことで、自分と友達の被害を小さくできます。
上手な断り方
断るときのポイントは、理由を言わずに、はっきり断ることです。理由を言うと、「それなら大丈夫だよ」と言い返されてしまいます。
- 「興味がないので、お断りします」
- 「お金のことは親と決めているので、契約はしません」
- その場で決めず、「一度持ち帰ります」と言って帰る(その後、連絡は返さなくてOK)
(新入生)
でも、先輩に誘われたら断りにくいです……。
その気持ち、よくわかるよ。でも本当の友達や先輩なら、断っても関係は壊れないはず。断ったとたんに態度が変わる相手なら、それが答えなんだ。
契約する前の「5秒チェック」
もし「ちょっといい話かも」と思ってしまったら、サインする前に、次の5つを自分に問いかけてみてください。
- その場で決めるよう急かされていないか
- 「必ず儲かる」「誰でも簡単」と言われていないか
- 親や友達に相談するのを嫌がられていないか
- 借金(学生ローン・クレジットカードの分割払い)をすすめられていないか
- 契約書の内容を、自分できちんと読んで理解できているか
ひとつでも当てはまったら、その日は契約しないと決めておきましょう。本当にいい話なら、一晩考えても逃げていきません。家に帰って、信頼できる人に相談してから決めても遅くはないのです。
契約してしまったら:クーリングオフ
もし契約してしまっても、あきらめないでください。クーリングオフという制度で、一定期間内なら無条件で契約を解除できる場合があります。
| 取引の種類 | クーリングオフの期間 |
|---|---|
| マルチ商法(連鎖販売取引) | 契約書面を受け取ってから20日間 |
| 訪問販売・電話勧誘販売 | 契約書面を受け取ってから8日間 |
| エステ・語学教室・学習塾など(特定継続的役務) | 契約書面を受け取ってから8日間 |
- 通知は、書面(はがき)のほか、電子メールなどでもできます。送ったものは、コピーやスクリーンショットを残しておきましょう。
- 契約書面の内容に不備がある場合は、期間を過ぎていてもクーリングオフできることがあります。
- 期間を過ぎてしまっても、ウソの説明を受けていた場合などは、契約を取り消せる可能性があります。
ひとりで悩まず、すぐに相談を
- 消費者ホットライン「188(いやや)」:電話をかけると、近くの消費生活センターにつながります。
- 大学の学生課・学生相談の窓口:大学として相談に乗ったり、注意喚起をしたりできます。
- 親や信頼できる大人:「言わないほうがいい」と言われた時点で、相談すべきサインです。
大学に相談すると、話を聞いて状況を整理するだけでなく、消費生活センターなど専門の窓口への相談の仕方を一緒に考えたり、同じような被害が広がらないよう、学生全体に注意を呼びかけたりすることもできます。「大学に言うと怒られるかも」と心配する必要はありません。相談した内容は、本人の了解なく広めることはありませんので安心してください。
窓口では、「恥ずかしくて言えなかった」「友達を紹介してしまって、自分も加害者になってしまった」と悩む学生さんにも出会います。早く相談するほど、取れる手段は多くなります。
窓口でよく聞かれる質問Q&A
Q1. マルチ商法が違法じゃないなら、入っても大丈夫ですか?
しくみそのものが法律で禁止されていなくても、実際には「ほとんど稼げなかった」「借金だけが残った」「友達との関係が壊れた」という結果になることが多いのが現実です。特に、学生ローンなどで借金をしてまで始めるのは、絶対に避けてください。
Q2. 断ったら、先輩や友達との関係が悪くなりそうで怖いです。
断ったとたんに態度が変わったり、しつこく連絡してきたりする相手なら、その関係はあなたにとって良いものではありません。サークルなど断りにくい関係の場合は、大学の学生課に相談してもらえれば、対応を一緒に考えます。
Q3. すでに学生ローンで支払ってしまいました。
ローンを組んでいても、クーリングオフや契約の取り消しができる場合があります。返済が始まっていても、あきらめずに消費生活センター(188)に相談してください。契約書や、勧誘されたときのメッセージは消さずに保存しておきましょう。
まどさんからのアドバイス
「簡単に稼げる話」は、残念ながらほぼ存在しません。本当にいい話なら、急かしたり、誰にも言うなと言ったりする必要はないはずです。
将来のために何かを学びたい気持ちは、とても素敵なことです。その気持ちは、大学の授業やキャリアセンター、公認のサークル活動など、安心できる場所で活かしてくださいね。
「あれ?」と思ったら、契約する前に窓口に来てね。一緒に確認しよう!
※クーリングオフの期間や条件は取引の種類によって異なり、適用されない場合もあります。具体的な対応は、消費生活センター(188)にご相談ください。


